奇蹟の表現 / イラスト:KEI

奇蹟の表現 (電撃文庫)

奇蹟の表現 (電撃文庫)


第11回電撃小説大賞銀賞受賞作。
高畑氏曰くライトノベル版レオン」らしい。

読後感は、高畑氏の評のように、マフィアやギャングが出てくる洋画を見たような感覚
ラノベにしては珍しいオヤジキャラ(サイボーグだけど)主人公という点は渋くて好きです。
てっきり架空世界ファンタジーと思いきや、「キリスト教」が出てくるので一部現実と交差したパラレルワールド的世界観なのかな?
作中で語られる臓器移植の技術水準が高すぎるせいか、中世の聖女マルグリット・マリーの逸話を絡めるにはちょっと噛み合わせが悪かった
中世なら聖遺物絡みの抗争があってもいいと思うんですが、この近代アメリカのような雰囲気の中ではそぐわない気がする。
物語上のキーとなる重要ガジェットに文句を言っても仕方ないんですがね……
「主人公がナツと娘を重ね合わせる」という展開に持っていくには、両者の交流が少な過ぎて説得力に欠けるし、主人公が根性と怒りだけで最強の暗殺者に勝ってるのが釈然としない(しかも暗殺者油断しすぎ)とか、随所に不満はある。
なんか、尺の都合上で主人公と少女の心の触れ合いや戦闘シーンを深く描写できなかった長編映画、みたいな印象。
それを小説として評価するには、内面描写とか心の触れ合いが甘過ぎる。もっと書きようがあったんじゃないかなぁ、という不完全燃焼なところがある。
後は、この雰囲気と展開ならもうちょっと話に悲劇性や「重さ」を持たせた方が、エッセンスになると思うんだけどなぁ。別れとか死とかの部分で(好みの問題ですが)
不満だけツラツラ書いてきたけど、まあ極端につまらなくは無いし、話の納まりはいい。
ただ、特別プッシュするほどの作品では無かった。