キスとDO-JIN! 〜王子様はカリスマ大手!?〜 / イラスト:由良 / もえぎ文庫ピュアリー

キスとDO‐JIN!―王子様はカリスマ大手!? (もえぎ文庫ピュアリー)

キスとDO‐JIN!―王子様はカリスマ大手!? (もえぎ文庫ピュアリー)


もえぎ文庫の姉妹レーベルで、2007年創刊。かなりの後発。
(2007年9月)現在で、3月・6月・9月と3カ月おきにリリースしてるようですな。
女性向けだが「BL系」と「乙女系」の2系統の路線があるようです。
BL系はガチホモ。乙女系は多少はBLを連想させるような描写はあるものの、総合的には健全なので男でも安心して読めます。多分


隠れオタクのお嬢様が即売会でサークルデビューすることから始まる騒動を描くお話。
うん、コレはいいかもれない。
オタク文化のメディア露出が増えて、同人誌や即売会などが出てくる作品が増えてきた昨今ですが、「オタク」をテーマに据えた作品は数あれど、「同人」をテーマに据えたライトノベルは少ない。
どのくらい少ないかといえば、私がパッと思いつくところでは「ラブこみっ!(2004年刊)」や「コミケ中止命令!(1989年刊)」くらいしか無い。後者に至っては前世紀発行の絶版本で、作品内の舞台は晴海である。懐かしい
こういう状況下で現れたこの作品の存在には、何ともいえない感慨がある。
この作品の特筆すべきところとしては、暗黙の了解としてスルーされてる事柄に踏み込んでいることである。この巻で言えば「転売屋」のことがごく自然に描写されている。
近年の即売会において、転売屋は当然のように存在する事柄ではあるが、それをサラッと描いてしまうところに、この作品のあっけらかんとした面白さがある。
有明以降の、即売会のタブーに触れながら、一定のリアリティを持って描かれていることを特に評価したい。


そのほかだと、どこか真面目な「欠点を抱えた才人」である主人公の控えめで直向なところが魅力的で、敬語言葉が妙にツボにはまる(菊地さんは敬語萌えらしい)
まあ、イケメン執事や大手サークルの連中が、少女レーベルにありがちな「王子様」タイプで、そこら辺はややベタな感じするけど、レーベルを考えたら当然か。
話の内容は、上記の同人タブー描写の濃さに比べてアッサリ目なので、ネタの濃さに比べて良くも悪くも展開が軽い。テーマの濃さが素敵なキャラ小説って感じ。
その辺を長所と見るか短所として見るかは人それぞれだけど、下手にストーリーの重厚さとかを求めなければ充分に楽しめるかと。私はそれなりに楽しませて頂きましたとさ。