ブラッド・クロス / 著:水壬楓子 / 絵:ホノハ / 一迅社文庫アイリス

ブラッド・クロス (一迅社文庫アイリス)

ブラッド・クロス (一迅社文庫アイリス)


一迅社文庫アイリスの創刊2ヶ月目は3作品。感想その2/3。
BL小説畑の作者による一迅社文庫アイリスのデビュー作。
奥付を見ると、過去に作者が書いた同人誌に載ってた小説+書き下ろし短編、らしい。同人誌かよ。


古いパリの町並みを再現したオールド・パリを舞台に、吸血鬼と悪魔が謎の「吸血鬼事件」を追う話。
当初は近代を舞台にした伝奇小説と思ったら、今より1000年以上経った未来、惑星間航法が確立して、クローンや生体ロボットなどの技術も身近になった時代。
怪奇小説なのか、SFなのか、ゴシックサスペンスなのか、BL風味なのか、非常にジャンルの良く分からない掴みどころの無い作品。
色々要素を積み込めばいいって訳じゃないのになぁ……無駄にカオス。
吸血鬼と悪魔の、長きに渡る腐れ縁と言う名の奇妙な友情がキモと言えばキモ。ただし、この友情関係はバイアスをかけて見ればBLチックな関係にも見える(主人公の吸血シーンとかね)訳で、ここら辺はさすが少女レーベルだなぁ、と。
ただ、「1000年以上の付き合い」というのは、二人の友人関係にそこまでの深みは感じなかったなぁ。長い時間の流れを感じないため看板倒れしてる印象。
内容に関しては、どこかで見たことあるような展開な上、正直読了後の脱力感が酷かった
「吸血鬼事件」の真相も顛末も大して面白いものじゃなかったし、「謎の少年」の正体や行動の謎に関しては苦笑いしか浮かんでこねぇ。
話の筋はまったくほめられたものじゃないし、そもそもせっかくSF突入の時代設定にしておきながら、SF設定を使いこなせてる感じはしないんだよねぇ。
SF部分は非常にステロタイプすぎるし、何か怪奇要素・SF要素・サスペンス要素・活劇要素など、色々なガジェットでゴテゴテと表面を飾り立ててるけど、「内容」がまったくそれに追いついてないんだよね。新鮮味が無く、話が面白くない。
うーん、あえていうならヘリが出てくる辺りのトンデモ具合は嫌いじゃなかった。


正直、過去話の短編の方が明らかに読めるものだった。
時を進めながら、色んな時代・色んな舞台で主役格二人(吸血鬼と悪魔)が出会いを繰り返す、変則的なタイムトラベル(様々な時間軸を舞台にした旅行記)みたいなものにした方が面白くなった気がしますよ。