琥珀の心臓 / イラスト:唯々月たすく / 富士見ファンタジア文庫


第17回ファンタジア大賞審査委員賞受賞作。
第17回受賞6作品の中では面白そうだと思ったので、後に取っていたらタイミングが悪く読む機会を逸していた作品。
コレでようやく第17回の受賞作をコンプリート。


異世界に飛ばされたクラスの人達を救うために、ロボット(?)に乗った戦うことになった少女の戦いの記録。
うーん、話のアウトラインや流れ自体は嫌いじゃない。
ただ、巻末でも触れられているように、「森」に関する概念が観念的過ぎてピンと来ない。
更には作中で散々触れられている「元の世界に帰る」事に関しても、具体的な方策が提示されてないため、全体的に足が地についてない不安定さがついて回っている。
それと、とある少女が書いている「日記」以外で、クラスメイトの台詞や登場するシーンがほとんど描写されないので、「クラスメイト」の存在が酷く希薄になってしまっているのも減点材料。
存在感があるのは親友の男女二人だけだから、「クラスメイト」のためにも戦っているという悲壮感が欠けてしまっている。クラスメイトの「顔」が見えない。
それは他のことに関しても言えることで、異世界獣人の台詞や背景に関する記述が少ないため、彼らの存在感も希薄になってしまってる。幽霊少女(?)の登場も唐突で、ストーリー上のご都合主義を感じてしまう。
しかしながら、このように明確な欠点があるものの、「つまらない」と簡単に切って捨てることが出来ないところがこの作品を評価するうえで難しいところ。
「泣かせ」系のストーリーによって綴られる物語は、観念的・概念的過ぎるものの1冊単位ではテーマに沿ってまとまっているし、感情(悩み・怒り)がストレートに描かれている主要キャラの造形も悪くない。
この作品を単品で見ると高い評価は出来ないし、正直面白いとは言い難いけど、端々に光るものがある。次を期待させるタイプの作家である。
ま、今回はイラストに恵まれたってのも少なからずあるとは思いますが、次回作に期待したいところ。