きゅーきゅーキュート! / イラスト:武藤此史 / MF文庫J

きゅーきゅーキュート! (MF文庫J)

きゅーきゅーキュート! (MF文庫J)


地味ながらも複数レーベルでコンスタントに作品を残す野島けんじさんの新作。
個人的にはT2Cの中の人がイラスト担当ってことで注目。
どこぞのエロ小説で表紙絵だけ担当したことはあったけど、今度はちゃんと挿絵も担当でホッとしてる。


魔力を強くするために魔族の食べ物を食べようとする主人公と、身分を偽って人間界にやってきた魔族令嬢二人のボーイ・ミーツ・ガール。
ヒロインに近づく理由が「魔界の食べ物を食べたい」という下心からなので、ややもすれば嫌気がさしそうなところではありますが、主人公が魔力を増強したいという動機が「人助けをしたい」という真っ直ぐな信念に基づくものなのが救いになっている。
ただ「人助けをしたい」という心理に至る動機付けが弱いせいか、主人公の性格や努力に若干の「作り物臭さ」を感じてしまいますがね。
でも、ヒロインのキャラ造形は割と普通に可愛い。この点はタイトルに偽りは無いかな。
「きゅー」が口癖なところなど、一昔前のエロゲフォーマットのようなところはありますが、悩んだり恥ずかしがったり怖がったりする、感情表現が豊かなところは見てて楽しくイイ感じ。
しかしながら、ストーリーラインは奇抜さの無い素直な展開なだけに、物語的には弱さを感じる。
うーん、まあ主人公とヒロインの関係ややり取りが微笑ましいし、脇を固める女の子達も(イラスト補正込みで)それなりに可愛く、立ち位置がはっきりしてる点は好感が持てる。
どうしてもキャラ小説的な楽しみ方しか出来ませんが、「キャラ小説」としては割り切って読めばそれなりに楽しめたかな。