クドリャフカの順番―「十文字」事件

クドリャフカの順番―「十文字」事件


まさか今更出るとは思わなかった文芸部シリーズ3作目。
前2巻が「角川ミステリー倶楽部」という今は亡くなってしまったレーベルだったこともあり、仕切りなおしの意味を込めてライトノベル臭を抜いた装丁で1,2巻も再刊行。
「文芸部シリーズ」というシリーズ名も今回初めて付いた


期待を裏切らない良作。順当に面白い。
文芸部4人の視点で描かれるマルチサイト方式。それがリアルタイムにグリグリ変わっていくのが楽しい。
一人称で書かれているので、これまで踏み込みの甘かった登場人物の内面や性格も掘り下げることが出来ている。
劇中で「本を売る」という目的があるおかげで、各人の行動指針が明確になって読み易い。
最後まで飽きずに読む事が出来た。
とりあえず、敬語っ子は大好きなので、千反田萌え、と言っておく(何
天然などじっ娘要素も完備で凄いよ千反田さん!


ただ、不満はある。
個人的に「十文字」の事件の謎や解決に魅力を感じる事が出来なかった。
犯人である「十文字」や、動機に関わる連中の影がイマイチ薄いせいで、謎が明かされた時のカタルシスに欠けた
ミステリ的な部分はやや小粒な印象を受けた。
完全に「文化祭」パートに食われてしまった気がする。
うーん、マルチサイトにした弊害で、漫研や「十文字」、千反田の違和感等など、一つのエピソードの重みが減ってしまった。まあ、4人分のエピソードがあるから仕方ないのですが。
そのせいか、明確な山場が無いまま終わってしまった感がある。
まあ、複線などはキッチリ消化してまとめあげてるところはさすがだなぁ、とは思いましたけどね。