黒水村 / 著:黒史郎 / 絵:ニリツ / 一迅社文庫

黒水村 (一迅社文庫)

黒水村 (一迅社文庫)


一迅社文庫デビューラインナップ7作品その7。
一般小説の方で、ホラー作品を出している作者によるライトノベルデビュー作。


課外学習でとある山村に連れて行かれた生徒達を襲う恐怖体験のお話。
閉鎖村で気味の悪い出来事が起こる、この雰囲気はまさしくB級ホラー。
パニックホラー的な怖さではなく、薄気味悪さが恐怖感を煽るタイプのホラー。
割と手馴れてる感じで書かれてて手堅い出来。
ただ、展開が少し残念
この手の小説は「追い詰められた主人公達」が「頭を使ったり工夫をしながら対抗する」展開が、ベタだけど燃える訳で。
その辺のアプローチが甘かったかなぁ、と。
黒幕の人物はともかく、「村人」は敵と言うには主人公達に肩入れしすぎて、主人公達の「追い詰められてる感」が薄れてしまってる。主人公たちの行動が場当たり的過ぎる。
そもそも主人公達、生き残って戦う連中のキャラが弱いんだよね……ライトノベルなんだから、もっとアクの強かったり、類型的なキャラ小説の造形で良かった気がするんだよなぁ。
少女二人のドラマは結構良かったけど、それ以外のキャラ要素が弱かった。ここら辺は一般小説出身という弱みが見えてしまったかもね。
B級ホラーとしてはそこそこ手堅くまとまっているものの、展開が物足りなくインパクト不足な上、キャラ造形がライトノベル寄りじゃないというのが、欠点かなぁ。
「リアルな路線」を目指す手段もあるにはあるけど、それならそれでイラストもそれっぽい人を選ぶべきだし(典型的なギャルゲ絵だし)
結局「B級ホラー」と「ライトノベル」を融合しきれなかった感じ。
この作品自体は色々と勿体無い出来でしたが、もしもこっちの分野で書き続けてライトノベル的な「あざとさ」を覚えてくれば面白い存在かもね。もしくは一般小説との越境系ライトノベルを目指すとかかなぁ。




しかし、一迅社文庫の感想には文句が多いように見えるかもしれないけど、理由は私が不満屋ってことだけではなく、本当に手放しで誉めれる作品が無いんですよ(趣味にあった作品が無かっただけかもしれないけど)
明らかな欠点があったり、あれ程度まとまっててもインパクトに欠けたり、経験不足が文章が堅かったり。
はてさて、これで創刊月の作品感想は終わったけど、その次月刊行分から素直に面白いと思える作品に出会えるか。