さよなら、いもうと。 / イラスト:きゆづきさとこ / 富士見ミステリー文庫

さよなら、いもうと。 (富士見ミステリー文庫)

さよなら、いもうと。 (富士見ミステリー文庫)


新井輝の新作読み切り長編。
プロジェクト名がアレな富士ミス企画「初体験Project」第一弾の4作品の1つ。


死んだ妹が生き返って、「結婚したい」と思っていた兄と過ごす刹那的で暖かな時間の物語。
話の概要はよくある「妹もの」をイメージさせるけど、一度死んでしまった妹の「結婚」という純朴なキーワードが、どこか物悲しく切ない。
それと、どこか達観したような主人公の造形が、この手の作品では割と珍しい気がする(「妹もの」だと妹に対して率直で強い感情を抱いている作品が多い気がするので)
ただ、アウトライン自体は悪くないし、個人的な嗜好としても「妹もの」は嫌いじゃないんだけど、端々に「足りない」印象を受ける作品でしたよ。
例えば、意味ありげに言っていた「知られるのはいいけど、教えてはいけない」という部分に対するフォローが無かったり、妹が死んだことで引きこもりがちになっていた少女のポジション(使い方)が曖昧過ぎたり、友人の恋愛相談とかの意味がよくわかんねーとか、母親とか幼馴染とか友人とかの登場人物がいる割に、ストーリー的には兄と妹だけで自己完結してしまってるところとか、色々と気になる部分が多い。
正直「材料を使いこなせてない」とか「使わない材料を持ってきすぎている」印象を受けてしまいましたよ。制御が利いてないというか、「伏線」を貼ることも消化することも放棄してるというか。
前述したとおり、アウトラインは嫌いじゃないし、予想外に終わり方は綺麗だったとは思うんですが、やっぱり中盤のグダグダ具合が最後まで気になってしまったかなぁ……
うーん、色々と消化不良を起こしてしまって、私には向かない作品でしたよ、と。