制覇するフィロソフィア / イラスト:エナミカツミ  / スーパーダッシュ文庫

制覇するフィロソフィア (スーパーダッシュ文庫)

制覇するフィロソフィア (スーパーダッシュ文庫)


定金伸治さんの新作。


「漢」を磨く塾に入塾した少女達の、友情と戦いの記録。
まあ、ぶっちゃけ女性版「男塾」
随所に男塾ネタが見られるし、完全に意識しての男塾パロディですね。
そして「フィロソフィア」というタイトルの通り、戦闘時にお互いの「哲(哲学でも哲理でも何でもいいけどさ)」をぶつけ合い、概念上で優位に立った方が直接戦闘で優位に立てるという特殊な設定を取っている。
この設定はかなり独特で、単なる男塾パロディで満足しないで挑戦的なアプローチをする点は評価する。
ただ、それが面白さに繋がってるかというと、正直カッタルさを強烈に感じてしまった
「哲の戦い」と書くと格好良く見えるけど、その実理屈っぽく、小難しい、哲学という名前の「揚げ足取り」。
お互いの理論の瑕を見つけ、矛盾を付き、自分の理屈を押し通すんだから、ある種の口喧嘩(ディベートだよなぁ。
「哲の戦い」をそのように捉えると、途端に「男塾」パロディとの親和性が途端に悪くなる。「理屈は後付け、まずはガチンコ超人バトルありき」というのが男塾なのに、「何よりも先に理屈ありき」と言うこの作品の哲学バトルが噛み合うはずが無いんですよ。
後書きによると「哲学の戦い」という発想が最初にあったみたいだけど、それを組み合わせるのが男塾というチョイスは正直成功してるとは思えない。不協和音を感じてしまう。
小難しく理屈っぽい男塾というのは何か間違ってる。


それと、男を女に置き換えたことも効果があったように思えなかった。
登場する女性キャラが「女性としての身体性が排除した女性」であり、精神的にも「漢らしさ」が美徳になってる世界なので、登場する女達にいわゆる「女性らしさ」が無い。
言葉遣いも男みたいだし、浪花節なノリで、徹底的に性格・価値観が「男臭い」
正直「女性」としての特性を生かさないのなら、性別が女である理由が無いと思うんだが。
「男そのものの女キャラ」なんて遠まわしなことをするなら、普通に「男キャラ」でいいじゃん。
最後の方で、「出産」という「女性」ならではのキーワードが唐突に出てきたけど、焼け石に水としか思えなかった
結局は、「女性版『男塾』+哲学バトル」を書こうというテーマからは、「百合が市民権を得てきたから、とりあえず登場人物を女キャラにしておこう」みたいな安直さしか感じられなかったよ。
後書きで「女ばかりで、萌えに走った」と思われるのがイヤと書いてるけど、それが嫌なら「無理矢理女ばかりにするなよ」と思った。
この設定に関しては明確なビジョンや必然性を感じられなかった。やれやれ。


うーん、単行本を全巻持ってる程度には男塾ファンの私ですが、この作品は徹底的にあわなかった。
絶賛してるラノベサイトもあったから、哲学バトルや女版男塾という設定は好きな人は好きなのかも知れないけど、少なくとも私はこの作品に関してはパスの方向で。