カーリー 〜黄金の尖塔の国とあひると小公女〜 / イラスト:椋本夏夜  / ファミ通文庫


高殿円さんの新作。
ファミ通文庫でのデビュー作。


大戦後、動乱のインド地方にあるイギリス系寄宿舎に通う少女達を中心に巻き起こる事件を描く物語。
実際の歴史にあった出来事と噛みあいながら物語が進んでいく「時代を感じさせる」世界観が、方々で言われてるように、ハウス名作劇場を彷彿とさせる。
それでいながら、耽美で百合臭のする少女達の友情やラブっぷりは、現代のライトノベルの時流に乗っている作品という気がしますね。
ベテラン作家らしく、陰謀劇と友情(愛情)劇の二つをちゃんと両立させてるのはさすがに上手い。
ただ、如何せん積み込みすぎというか、展開が急ぎすぎというか。
「陰謀劇」や「内乱」という展開に持っていくため、「学園」の生活描写が中途半端なところで急激に舵を取ったみたいな感じがする。
1巻では「学園内での争い」を描くことに終始しておけば良かったのに、「戦争・陰謀」とかまで踏み込もうとするから忙しない
うーん、面白くない訳じゃないけど、そういった忙しさの方が印象に残ってしまったなぁ。
今回で「国家の運命を左右する流れ」が出来てしまったから、今後は物語の方向性が限定されそうなのが残念。
単純な「学園もの」として描くのは難しそうなので、続巻もあまり期待したいとは思わないかなぁ。



しかし、今作のような雰囲気の作品に絵師に椋本さんを持ってくるのは限りなくベターな選択だとは思うんですが、その分新鮮さは少ないなぁ。
「作品の雰囲気を合っている」という印象を持つのは確かなんですが、こちらの想像を越えてくることが無い。
いや、椋本さんは好きな絵描きさんではあるんですけど、色んな意味で「想像通り」過ぎて。
うーん、この辺は沢山起用されてる絵描きの辛いところだなぁ。