108年目の初恋。 / イラスト:とりしも / ファミ通文庫

108年目の初恋。 (ファミ通文庫)

108年目の初恋。 (ファミ通文庫)


第8回エンターブレインえんため大賞優秀賞。
今回のえんため大賞の中では最高評価作品かな?


築108年の旧校舎と中学生少年との恋愛劇。
あー、まあ、単純に完成度が高いかな。
旧校舎の「少女」の葛藤や喜びなどが丁寧に描写されており、ガール・ミーツ・ボーイ的な手法で描かれる物語は実によくまとまっている。
ここまで人間と人間以外の淡い恋愛をストレートに描くとは思わなかった。もうちょっとほろ苦い青春の悲恋的なものになると思ったのに。
とりあえず、旧校舎の視点で恋愛劇を描くという発想は面白いし、全体的に話として良くまとまってるので余り突っ込む部分は無いかなぁ。
まあ、旧校舎と人間の恋愛という特殊な設定のはずなのに、物語としてはどこかで読んだことあるような「少年・少女の初々しい恋愛」の範疇でまとまってしまったことを、人によっては不満に感じるかもしれませんがね。私はどちらかというと少し不満を覚えた派。
個人的には、もうちょっとアクが強い方が好みですが、出来は悪く無いのでそこそこは楽しめたかな。



「優等生的に良くまとまった新人賞受賞作」としては、電撃の「お留守バンシー」辺りに印象は近いかな。
なまじ作品単品として完成度が高いので、逆にこの話の続編を読みたいとは思えない。そんな感じ。
この作者の次回作には期待したいところですが、シリーズ化はマジ勘弁