楓の剣! (富士見ミステリー文庫)

楓の剣! (富士見ミステリー文庫)


第5回富士見ヤングミステリー大賞佳作受賞作。


ポンポンと状況が変わり、サクサクと進む展開は読んでいて小気味良い。
このリーダビリティの高さは好感が持てる。
主人公格の二人組の、互いに好意を持ちながらも憎まれ口という関係は実に微笑ましく、おてんば娘に対して対等に近い力関係の幼馴染、というのは割と新鮮だった。
ただ、描写不足な面が端々で見受けられるのは減点材料。
悩んでるシーンが軽く見えてしまったり、いきなり時間や状況が飛んだりして少し微妙に感じた。
後は、てっきり祟りなどの超常現象と見せかけた事件と思いきや、本当に超常現象の事件なのかよ。
チクショウ、何かトリックを使って超常現象に偽装してると思ったのに……最初から最後まで全部超常現象っていうのは、安易過ぎませんかね?
少しは、こう、捻った展開とかを。
まあ、デビュー作としてはそこそこ読めるけど、作者の今後に期待するほどじゃない。
いい意味でも悪い意味でも手軽でサクッと読めるライトノベルで、どんなに甘目に見てもミステリではない大江戸活劇。


ところで、このタイトルって正直どうなんでしょうかね。
剣というのは全然重要なキーワードじゃ無かったし。
「惣領息子のいない家に生まれた娘」ということを悩む様子はほとんど無かったし、そもそも弥比古がいるから跡取り問題は深刻な話題にならないし。
むしろ、弥比古の剣の方が重要な位置を占めている気がするんですがー