トリックスターズ (電撃文庫)

トリックスターズ (電撃文庫)


6月刊行の「電撃が贈る新人ミステリー」2作品の片割れ。
いやあ、電撃の「自称ミステリー」としては久々に楽しめた。
アニメ制作現場ミステリの「英ファイル」以来かな(それはどうなんだろうか)


中味は、密室、探偵役、ワトソン役、暗号、ミスリード、叙述、読者への挑戦状などの定番のガジェット詰まった紛うことなきミステリ
「魔術」というロジックを破綻させる要素が中心にありながら、ミステリとして破綻してないところが素晴らしい。
こういった「非日常」の要素が入り込むと、アンフェアな解決をされることがあるので、綿密かつ過密な複線を敷くことで論理性を保っているところは高く評価したい。
細かい部分に気になる点や疑問に思う点が無いわけでは無いし、読者への挑戦状がある割に「解く(解かせる)」というより「謎を楽しむ」という内容になってるアンバランスさもあるけど、全体的に見ると中々完成度は高い。新人としては上出来の部類に入る。
構成のバランスが良くて、主要登場人物のメリハリも付いてて読み易い。ミステリとしても上々。
読んだ感じでは、続きもありそうなので続編にも期待期待っと。


しかし、世界に数人しかいない本物の魔術師、赤い魔術師、666の魔獣、アカシックレコード、ロア家、魔術に関するウンチクとかの、キーワードが揃うと某同人ゲームを思い出してしまう。
まあ、オカルト系知識としてはメジャーなものも多いから脊髄反射でパクリという気は無いけど、ここまで連想キーワードが多いと意識した面があるのかなぁ、と邪推してしまう。
それでなくても、西尾・奈須以後という感じの文章や言語センスだよな、としみじみ感じてましたとさ。