コスプレ温泉 (ソノラマ文庫)

コスプレ温泉 (ソノラマ文庫)


吉岡平らしい、オタ系コミカル小説。


まず、微妙に驚いた点として作中に出てくるコスプレの元ネタとして「Kanon」「ピアキャロ」「妲己」とか実名を使ってるいるところ。
普通は伏せたり、一部変えたりするのに。さすが御大、新人や零細作家に出来ないことを平然とやってのけるー
……まあ、痺れたり、憧れたりはしませんが
一応、序盤から中盤のコスプレイベント描写はよく出来ている。物語を盛り上げるために、多少大げさに描かれてる面もあるけど、この手のものである程度のリアリティがあるのは珍しいかも。
取材に二年とか言ってることは伊達じゃないか(取材とは言っても、イベントに行きまくって遊んでただけだろうと邪推してるけど)
ただ、発行年の割に、コスプレの元ネタが古めなのがちょっと気になるかな。


内容としては「失業中にそんな頻繁にイベントに余裕があるのか?」とか「染まるのが早過ぎ」とか随所に強引・荒い部分が見受けられる。
そのおかげでテンポが速くて読み易いけど、薄っぺら感が出た気がする。
まあ、細かいことを気にするような作品でも無いんでしょうがね。


ただ、後半の「温泉」パートに入ってからは結構グダグダ。
SF大会のくだりの、妙なリアルさは皮肉が利いててそれなりに面白かったけど、そういったオタに対する皮肉のスパイス以外はちょっとなぁ。
幾らなんでも、次々と成功していく様子はご都合主義過ぎるかな
それと姉と妹との対立もサラッと流されてるし、大雑把。


吉岡平が好きで、オタ系小説が好きで、話の筋や展開の大雑把さを許容できて、ご都合主義でも憤慨しない人なら、少しは楽しめると思います。
吉岡らしい軽さと読み易さが、この場合は最大の武器かな。