狂乱家族日記壱さつめ (ファミ通文庫)

狂乱家族日記壱さつめ (ファミ通文庫)


話題の新人による、メジャーレーベルデビュー作品。その片割れ。
私の優しくない先輩」「ちーちゃんは悠久の向こう」に続く3冊目。


まあ、普通に面白かったですよ。
話の中心となる「家族」だけでもそれなりの人数(人外含む)が出てきますが、それぞれでしっかりキャラ立ちしてるので、決して混乱したりすることは無い。
この愛すべきキャラ同士の掛け合いを見てるだけでも楽しい。
「家族」ものらしく、ホロリと来るシーンもあるし、「反撃」に至るまでの流れも小気味良い。
家族にあだなすものを堂々と粉砕していく様は実に清々しい
コメディベースの「家族」ものとしては、一定以上のレベルに達してると思います。
下手に家族全員にスポットをあてずに、家族の一人の話を中心に進んでいくので、視点がぶれることが無く、1冊でいい具合にまとまっている。
次回への複線がひかれていたりして、いかにも「シリーズもの」の1巻という感じの1冊ですが、この巻だけでも消化不良を起こさないで充分に楽しめる点は評価したい。


うーん、前2作でその安定した筆力は承知済みだったけど、それはモロにライトノベルにシフトした今作でも健在。
新人らしからぬ安定した文章は読んでいて安心できるなぁ。
これまで3冊を読んで、やっぱりこの作者の文章はテンポが良くて読み易い。
ホラー、恋愛、ドタバタコメディ、どの作風の作品を書いても変わらないこのリーダビリティの高さはこの作者にとって、最大の武器だと思う。


ただ、ここまで誉めといてなんですが、この作者は天才というより「多作の秀才(or優等生)」という印象が残る。
「優等生」より「問題児」の方が読んだ時のカタルシスが大きいのは基本だと思うので、「出来がいい」ことに異論は無いけど、斬新さやアクの強さに欠けるきらいがあるのは確か。
既存のものを上手く取捨選択して、構成しなおして、安定した文章で書き出してるという感じ。新味を生み出すことは無いか。
気楽に読む分には充分すぎるほど楽しいんだけど、この作者にはそこまで絶対的にハマルことは無いかもね。