激走 福岡国際マラソン 42.195キロの謎 / 単行本


世にも珍しいマラソンミステリ。


オリンピック選考を兼ねる福岡国際マラソンのペースメーカーに志願した主人公。主人公の狙いは?各選手の思惑は?という話。
いや、コレは面白かった。
各人がそれぞれの思惑から駆け引きをするマラソン小説として、非常に良く出来た作品でした。
群像劇のように視点人物が変わって、それによって語られる内面や過去が上手く作品を彩っている。
そして、最後まで明らかにならない主人公の狙いが分かった時の、パズルのピースがはまった感覚が実に心地よかったですよ。
非常にコンパクトにまとめられたページ数なのに、この完成度は素晴らしかった。
近年のスポーツミステリの傑作と読んでいいかもね。


ただ、惜しむらくはレースの途中で起こる、人の生き死に関わるアクシデントの部分は要らなかったかな。
この部分がミステリ的なエッセンスになってるのはわかるんですが、スポーツ小説として見た場合この部分はいらない。
スポーツ小説としても良く出来ているだけに、その雰囲気を壊すようなミステリ要素の組み込み方はして欲しくなかった。