空ノ鐘の響く惑星で〈12〉 / イラスト:岩崎美奈子 / 電撃文庫

空ノ鐘の響く惑星で〈12〉 (電撃文庫)

空ノ鐘の響く惑星で〈12〉 (電撃文庫)


長きに渡った、渡瀬さんによる電撃の良作シリーズもいよいよ完結。


世界の命運をかけて、世界を守ろうとする者達と自分のために世界を犠牲にしようとする者達が対決する話。
とりあえず、フェリオの爽やか二股発言に惚れた。漢らし過ぎる
それと、パンプキンの生き様が格好いい。どこか侍を髣髴とさせる素敵なトリックスターでした。
シリーズとしては、この上なく綺麗にまとまったという印象を受ける。
大方の伏線を消化して、全てが収まるべきところに収まったという、長期シリーズとしては非常に幸運な作品と言えるかもしれない。
ほとんどのキャラに見せ場が与えられ、それぞれの結末を迎えるバランス感覚は絶妙。好き嫌いが分かれるかもしれない、大方の人間が幸せになるエンディングも私としては肯定したいところです。ウィスタルの登場などやや強引な部分があったことなどは確かですけどね。
しかし、最後のエピローグでいきなり数年後に飛ぶんじゃなくて、直後の時間軸も描いて欲しかったというのも本音。結婚に至るまでの3人の関係とか、主要キャラの「その後」とか色々と見たいところが多かっただけに尚更ね。
まあ、細かい瑕はあるけど全体的に見れば完成度の高い最終巻と言える。
うん、面白かった。



シリーズを通して見ると、戦記風ファンタジーとして、SFを絡めたファンタジーとして、制御された端正な世界観を、確かな筆致で描いた実にクオリティの高いシリーズでした。
「完成度の割には売れない」渡瀬作品だけあって、途中までは打ち切りに怯えながら追っていた訳ですが、こうして綺麗な終わり方を迎えたことに感無量。
ただ個人的な不満点を言うとするなら、後半にもうちょっと軍勢と軍勢がぶつかりあうような戦略・戦術面でのアプローチが欲しかった。後半になるにつれ、戦略や軍事よりも謀略や政治に、戦記よりもSFに作品の傾向が流れていったことが少し残念。
謀略や政治も嫌いじゃないんだけど、前半の軍勢による戦の方が好きなので……まあこの辺は本当に個人的な嗜好の問題ですけどね。
しかしながら、主人公とウルク・リセリナの三人を機軸としたラブロマンスとしての雰囲気や展開が良く、普通の戦記ファンタジーには余り見られないラブストーリーとしても高い魅力を持つ稀有なシリーズでしたよ。
とりあえず、12巻しっかり楽しませていただきました。渡瀬さんお疲れ様でした。
次も地味ながらもしっかりとした作品を期待させていただきます。