シリアスレイジ〈3〉虎落笛 (電撃文庫)

シリアスレイジ〈3〉虎落笛 (電撃文庫)


昨年の選考委員奨励賞受賞作も3巻目。約半年ぶりの新刊。


うん、詰め込みすぎ
平均的なページ数に詰め込まれたイベント・キーワードが、守屋篤志と神崎栞の他大学冬季特体への参加、蓮堂貞教の「父」との因縁、美雪との絆、「神」と呼ばれる生物の悲劇、イリーガルイージスの暗躍、KRHCの腐敗、新たな師になりそうな変異種採集者・大牟田の登場、菱緒と舘森のドタバタ、AGIS計画、国内企業や大学の関係の説明、等など
様々な因縁・複線・設定説明などが乱発されたため、一つ一つの要素が薄められ、明らかに焦点がぼやけている
誰が主人公か、どの視点がメインストーリーなのかがはっきりしない。
こういう、物語として散漫になってしまっている点は1冊単体で見るとかなり辛い。
何か複線を貼るためだけに終始しただけの1冊だった。



以下、蛇足
正直、今回は冬季特体に集中して描けば良かったのに、他の要素を無駄に入れ過ぎたと思う。
例えば、菱緒と舘森。
1巻・2巻と学外が舞台だったせいで、「上尾大学」やそこに通う学生の描写が明らかに不足しているから、突然菱緒や舘森などのサブキャラにスポットが当たっても厳しいんですよ。
学外にばっかり出張って、主人公たちが通っている足場ともいえる大学の描写をサボっていたツケがここに来たって感じ。せめて、「研究室」の描写くらい煮詰めておけば良かったものを。
学生が主人公の話で、学校の描写をサボると辛いという教訓が学べる作品でしたとさ。