- 作者: 笠井潔
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 1995/05/12
- メディア: 文庫
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笠井潔さんの代表作、矢吹駆シリーズ第一弾。
ベテラン作家の一人だけど、著作を読むのは初めてかもしれない。
首切り殺人を発端とするラルース家連続殺人事件の話。
舞台がフランスで、「探偵役」の矢吹以外は外人と言うことで全体的に海外ミステリっぽい雰囲気と文体を持つ作品でした。
現象学を用いて事件を解体する「探偵役」というアイディアは独特でインパクトがあるが、現象学に関するウンチクや語りなどが頻繁に入るため、多少読み辛くなっている。
この衒学的な部分が楽しめるかどうかで、この作品を楽しめるかが大きく左右される。
ただ、衒学的で独特な推理法ではあるものの、ミステリとしては正統派で本格的。
「動機」や「事件の裏側」などは、ちょっと飛躍し過ぎな気がして微妙だったけど、「首が切られた理由」などは理論的で納得できるもので満足でしたよ。
ミステリではよくある「首切り殺人」だからこそ、「良くあるオチ」「陳腐」じゃないものを出すのは割と難しいんだけど、この作品の「首を切られた理由」はよく出来てましたよ。
うーん、矢吹やナディアなどの主要人物があまり好きになれないことで、衒学的な会話が多少ウザッたく感じてしまったものの、ミステリとしてはオーソドックスでそれなりに楽しめました。
ベテランになる程、長く作家業をやってる人はやっぱり実力があるんだよなぁ、と再確認と。