犬はどこだ / ミステリ・フロンティア

犬はどこだ (ミステリ・フロンティア)

犬はどこだ (ミステリ・フロンティア)


米澤さんのミステリ・フロンティアでの2作目。
読んだのは年初めの頃なのに、感想書くのを忘れてた。


犬探し専門で探偵を始めた主人公の元に訪れる人探しと古文書解読の依頼から始まる「事件」の物語。
主に二人の「探偵」によって、人探しの依頼と、古文書解読の依頼が同時進行する形式で物語は進む。
そして、次第に絡み合っていく二つの事件・明かされる真相、という流れにミステリ作家としての確かな手腕を見た。
二つの依頼内容は地味だし、明かされた「真相」自体も派手さには欠けるけど、制御された静かさは、都落ちした主人公の厭世的な雰囲気にマッチしていて中々よろしかったですよ。
ただ、米澤さんの他作品に比べて登場人物たちの平均年齢が上がってるで、「青春小説」的な要素が抜け落ちてしまったのは、既存の米澤作品ファンとしては残念でした。
今回の作風の方が一般ミステリファン受けはいいだろうから(いつものはライトノベルファン寄り)、これまでの作品とは違った年齢層をターゲットとして話なんでしょうけどね。
まあ、クオリティ自体は高いと思うんですが、好きか嫌いかを言えば正直あまり好きじゃないかなぁ。
別に内容云々じゃなくて、私が持病としてアトピーを持ってるため、主人公の境遇に共感を覚えすぎてちょっと読むのは辛かったのが大きな理由。
悪化したアトピーって洒落にならんて……(私情)


あー、そういえば某切り裂き猫の偉い人の感想で、帯の煽り文の印象が読む前と後でひっくり返る、みたいなことが書かれてましたが凄く的を射た感想だと思いましたよ。
確かに読了後に見ると、「ニヤリ」と言うか「ヒヤリ」と言うか、そんな風に感じられる一文だ。