聖遺の天使 / 双葉文庫

聖遺の天使 (双葉文庫)

聖遺の天使 (双葉文庫)


三雲岳斗の純正ミステリ小説。
以前に単行本で出た作品の文庫落ちなのかな?


聖遺物を巡って起こる奇妙な事件をレオナルド・ダ・ヴィンチが解決する話。
歴史上の人物を登場人物に、時代設定もちゃんと合わせて作ってあるところは三雲さんらしいと言えば三雲さんらしい。意外とちゃんとした作りだった。
ミステリとしては、探偵役のダ・ヴィンチはあっさりと真相を看破してしまい、読者はワトソン役の視点で事件を検討することになる。
しかし、真相を看破したダ・ヴィンチ論理や推理の展開がかなり飛躍しているので、読者としては「なるほど」と思うよりも「ハイハイ、『神の視点』に立った探偵役によるご都合主義的万能推理ね」と思ってしまう。
ダイナミックな仕掛けによる「磔の理由」までならまだしも、「天使」の正体まで見通すのはさすがに根拠が足りないと思うし、アクロバットな推理過ぎる気がする。
それと、あんなダイナミックな仕掛けを使ったなら、もっとあからさまな痕跡が残っててもおかしくないと思うんだけどなぁ。住人に見付かってもおかしくないだろうし。
さすがに万能ダ・ヴィンチさん以外に気付かれないってのはどうなんだろうね。
ミステリとして体裁は整っているし、謎・トリックなどもそれなりにちゃんとしてるんだけど、「推理」や「論理」に妥当性や整合性に欠けたんじゃないかぁ、というのが正直なところ。
もうちょっと凡人でも納得できるだけの、整然とした論理展開をお願いします、って感じの作品でした。
出来は悪くないけど、良くも悪くもラノベ作家らしさの出てこない、ある程度まとまったミステリの凡作って印象だなぁ。
もうちょっと突き抜けてくれたほうが個人的には好み。