殺戮にいたる病 / 我孫子武丸

殺戮にいたる病 (講談社ノベルス)

殺戮にいたる病 (講談社ノベルス)


典型的なサイコミステリ。
「エピローグ」から始まる書き出し、殺人者・擁護者・追跡者の三つの視点によって織り成される物語は、時系列の同期を取らないままラストに向かって収束していく。
この独特の構成によって描かれる物語は、明確な異常性を内包する
異常な心理による「真実の愛」によって行動する殺人者、強烈な妄執に駆られた擁護者、罪の意識に捕らわれた追跡者。
それらの内面がひたすら気持ち悪く、悲しく描かれている。そして、殺人描写もグロさに満ちた直接的な描写がされており、人によっては生理的に挫折するだろう。
こういった読者を引き付ける描写力は抜群
「気持ち悪さ」と「グロさ」の描写力がありすぎて人を選ぶ作品になってしまってるのは皮肉だね。
まあ、ここら辺はベテラン作家の面目躍如といったところか。


ただ、ミステリとしての仕掛けはラストの一つくらいで、その出来はあまりよろしくない
「ああ、やっぱりね」というのが正直な印象。ぶっちゃけ拍子抜け
うん、やっぱりこの作品はトリックなどのミステリ的な部分を楽しむような小説じゃないですわ。
描写の「気持ち悪さ」を味わう作品。
そういう風に割り切れば、かなり読める作品になってると思います。
「気持ち悪さ」を楽しめれば、ですが。