星界の断章 <1> (早川文庫JA)

星界の断章 <1> (早川文庫JA)


星界シリーズ初の短編集。
ラストの書き下ろし以外は、SFマガジンやゲーム特典、読本などに掲載されたものを集めたもの。


内容自体はプレストーリーを中心とした短編とショートショート玉石混交
正直、満足しがたい内容だったかな。
各話によって面白さに差がありすぎる。
普通の外伝的な短編だけかと思ったら、通常と違うフォントで書かれたショートショートは、それこそどこぞの同人誌のような内容だったし。
星界シリーズでやるには、「同人誌即売会」とか「2ちゃんねる」とかのネタは飛び過ぎだろう。
まさか星界「萌え」「攻め」「めがねっ娘」などの単語を見ることになるとは思わなかった……
違うフォントが書かれた話は、正式なストーリー・設定じゃないと思いたい。
しかし、森岡さんが2ちゃんねらーなのは有名な話だけど、商業単行本でこういった暴挙をするのはどうなんだろうなぁ。
最初は面白かったけど、こういった内容の話は1冊で一編で充分だ。何回も繰り返されるとちょっとゲンナリする。


それとプレストーリー中心のせいか、本編の主要キャラの出番が軒並み少なかったり無かったりしたのが残念。
12編もあるんなら、あんな素っ飛んだネタなど乱発せずに、ジントやラフィール、エクリュア、スポールなどに出番を与えて欲しかった。
次回の短編集では、プレストーリーだけじゃなくて、本編のサイドストーリー的な内容を期待したいところ。


ただ、書き下ろしの「原罪」だけは大満足。
短い中にも、アーヴの「子供っぽさ」や「ある種の純粋さ」から来る不安や決意・決断、故郷の人間との噛み合わない駆け引きとボタンの掛け違い、それによって訪れる故郷との決裂と背負うことになった罪などが、実に上手く描かれていた。
この話はなかなかの名エピソードだと思う。
まあ、その分退屈なエピソードもあるから相殺される訳ですがね(苦笑)
全体的に見ると山谷が激しくて割とカッタルイ。
星界シリーズは好きだけど、そこまで贔屓目で見ようとする出来ではなかったかな。