飛鳥井全死は間違えない / イラスト:目黒三吉 / 単行本

飛鳥井全死は間違えない

飛鳥井全死は間違えない


ゲーム作家(エロゲライター)として、一部で熱狂的な支持を受ける元長柾木の初単行本。
ファミ通文庫月姫アンソロジーノベルに氏の短編が一本載ってたりしたけど、まあ、それはカウントしないのだろう。


中味はまあ、時代の流れに適応したのか、それとも元長氏の元々の素養なのか知りませんけど、いわゆるセカイ系とかファウスト系文学の時流にのった作品だった。
元長さんの紙媒体著作だと、ファウストに収録された一部とファミ通文庫月姫アンソロジーの短編、SFマガジンの短編、月姫の同人誌くらいしか読んだ事が無いけど、それらの作品に通ずる「元長氏らしさ」というものは確か在った。
ただし、絶望的なまでにエンターテイメントをしていない
それ以前に物語として成立してるかすら怪しい
物語としての段取りや仕組みを排除した上で「元長の世界」というものを、装飾や娯楽的なものを組み込まずにメタフィクションとして構築したって感じ。
ストレートに「元長」を感じることが出来るが、それを楽しむことが出来るのはあくまで既存の元長ファンやファウスト系の「なんちゃって文学」が好きな連中くらいだと思う。何しろエンターテイメントも物語も無い、限りなく実験的な要素に満ちた作品だし。
正直、小説家としてはペーペーの人が出す初単行本としてこういった作品を出すってのはどうなんだろうと思う。
何冊か本を出して、固定ファンがついてからやるべきだと思うなぁ。
まあ、私は生粋の元長儲ですから、元長的言語世界や理学的な世界解釈があるだけで、この作品もそれなりに楽しめたんですが、それでもこの作品を「新人作家の初単行本」としては評価出来ない
贔屓目無しで見るなら、作者のオナニー小説と言われても仕方ない作品だと思いますし。
元長ファンへの燃料としては悪くないと思いますがね。


ところで、上では「楽しめた」とか言ってますが、決してこの作品の内容を理解できた訳でも、把握できた訳ではないです。
多分、半分も理解してないと思います。私。
ようは、「メタテキスト」を読み・書きかえることで、展開や段取りを破壊して物語を加速・収束させるってことなのか?
メタレベルで強制的に事件を「解決」してしまうタイプの、メタミステリの系列と考えていいのかね?
ん〜、まあ、時間があったら読み込んだり考察したり、各所の書評でも探してみようか。
あー、うん、上では色々言ってるけどやっぱり私個人としては元長の生み出すSense of wonderが好きだし、この作品を好き嫌いで分けろと言われたら嫌いとは言わないだろうなぁ。
信者と言われても否定できない。

ところで、月姫同人誌の後編マダー?_| ̄|○