ライトノベル150選についての言及


 
上記の150選に対する雑感。
リストアップされた作品・シリーズ中で、最低1冊でも読んでる作品は134作品くらい、という状況という前提でアレコレ言及してみたい。
選者である文芸評論家の方のことはよく知らないのですが、「戦記もの」が好きなSF畑の人なんだろうな、という第一印象。
正直リスアップのレギュレーション、コンセプトがどうなっているか分からないですが少女小説については
 
 
という理由で除外しているようですね。
外部資料を理由に少女小説を除外することの是非はここで議論しません。
よって、
 

少女小説は外部資料を理由に除外前提で考える。
・1作者1作品のように見えるので「そういうレギュレーション」があると考える。
・「選者である文芸評論家の個人史」ではなくライトノベル史」としての選出としての疑問点を挙げる。

 
という感じでアレコレ重箱の隅をつついていこうという感じで書いていきます。
「バージョンアップしていく」予定なら、このタイミングでアレコレ言っても問題ないでしょう。多分。
ところでウィザードリィ」が「ウィザードリー」になっているの地味にムズムズする……
 

冴木忍作品は入っていないのですか?
 →90年代ファンタジア文庫において麻生俊平作品等の複数の非アニメ化作品がある中で冴木忍作品が無視される理由は?
 
フォーチュン・クエストが入っていてゴクドーくんが入っていない?
 →スニーカーから電撃への移籍作品として並列で語られることが多いヒット作でフォーチュンだけが挙げられた理由は?
 →ゲームシステムから影響を受けた作品という選出?
 
■90~ゼロ年代前半の電撃文庫の選出について
 →どうしてブギーポップが入っていないの?
 →「挑戦的なリスト」という発言がありますが、「挑戦的な150選」を選んでいくコンセプトなのですか?(https://x.com/nakatsu_s/status/1800516171697193306
 →高畑京一郎作品が無いことについても疑問しかない。
 →古橋秀之作品については、メディア化した訳じゃないし、ここら辺が省かれてしまうだけならまだ理解できるのですが……
 →超常要素が無いラブコメ(恋愛)の系譜として「半分の月がのぼる空」を除外する理由も分からない。
 
星界シリーズが入っていない
 →90年代のSFを語る上でも、WOWOWアニメ時代を語る上でも重要なピースだと思うのですが選ばれていない疑問。
 →リスト全体として「ハヤカワ文庫」からは選ばないという内部レギュレーションがあるんですかね?
  (ソノラマ、トクマ・ノベルズ、ライト文芸等から選んでハヤカワから選ばない理由が不明ですが。SF者のこだわり?)
 
C★NOVELSファンタジアから選ばれていない
 →レーベルごと無視してるのでなければ、デルフィニア戦記スカーレットウィザード皇国の守護者辺りから1作品も選ばれていないことが疑問。
 
■ミステリへのアプローチについて
 →乙一作品やGOSICKが選ばれている一方で、金田一ノベライズ、氷菓講談社ノベルス等からは選ばれていない疑問。
 →一方で講談社タイガから「アンデッドガール・マーダーファルス」が選ばれていたりするのが選出基準が不明。
 
■「ジャンプ ジェイ ブックス」からの選出について
 →「ジャンプ ジェイ ブックス」から複数選ばれているのに「おいしいコーヒーのいれ方」が入らない?
  
美少女ゲーム(エロゲ)からの影響について
 →「エロゲライターの越境」として田中ロミオが挙げられているが、「美少女イラストの流入」「複数ヒロインによるフラットな立ち位置でのヒロインレース」という部分での美少女ゲームからの影響が語られていない。
 →上記の影響を語る上でまぶらほ」辺りが挙げられていないことには疑問を感じる。
 
■日常系ラノベ・「変な部活」ラノベ・四コマラノベの系譜として
 →日常系とされていたラノベとして「僕には友達が少ない」があるが、あの時期として並列に語られる「生徒会」シリーズや、先鋭化した後続のGJ部などが入っていない。1作品だけでいいという判断?
 
■海外(アニメ)でのヒット作について
 →中国でのヒットによってアニメの続編が作られている「デート・ア・ライブ」についての言及がない。
 →ラノベアニメの海外配信を語る上でのトピックスだと思うけど、全体的にアニメ方面のアプローチの曖昧さを感じる。
 
■2010年前後のラブコメについて
 →ラブコメラノベアニメが増えてきた時期の大ヒット作の「IS 〈インフィニット・ストラトス〉」がない。後に「石鹸枠」と揶揄される作品群のラインに繋がる作品だと思うんですけどね。
 
■無双系ライトノベルについて
 →Web発の最初期ヒット作として「レイン」、書籍ベースで「火の国、風の国物語」みたいな作品が入っていない。
 
■ボカロ小説について
 →まったくアプローチが無い。後世への影響云々はともかく、当時独自の層には確実に刺さっていてセールス的にも数字を残していた。「悪ノ娘」か「カゲロウデイズ」くらいは載せておくべきでは?
 
■「ライト文芸」寄りのレーベルからの選出について
 →メディアワークス文庫講談社タイガからは選ばれているのに新潮文庫nex富士見L文庫から選ばれていない。富士見Lは少女小説の系譜という解釈?
 →レーベル的に扱いが難しい「タレーラン」「櫻子さんの足下には死体が埋まっている」辺りのチョイスが無いのは仕方ないにしても。
 
■ジャンルの走りとして
 →社会人主人公とティーンのラブコメとして「29とJK」を挙げるのはまだ分かるけど、教導系の文脈で語るべき「公女殿下の家庭教師」はその系譜としては先発作品でもない。
 
■配信ものについて
 →「配信もの」として挙げられているのが特に先発作品でもない「現代ダンジョン配信もの」1作品という納まりの悪さ。作品自体は好きだけど、どういう基準?
 
■悪役令嬢ものについて
 →「少女小説」レーベルを除外した影響で「乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった…」が抜けてしまって、このラインが不鮮明になってしまっている。
 →「現代社会で乙女ゲームの悪役令嬢をするのはちょっと大変」は名作だと思うけど、「悪役令嬢もの」としては変化球過ぎる。
 
■Web発の人気ジャンルについて
 →追放もの、糖度高目の1対1ラブコメ、みたいなここ10年くらいのWeb発ムーブメントを象徴する作品が無い。
 →絶対数は少ないけど戦国転生ものが1作品も無いなど、Web発ジャンルのピックアップは甘い印象。
 
■例えばこの辺は入れないの?
 →「小説 ドラゴンクエストV」とかのゲームノベライズ系。
 →アニメ化作品持ちの中で、音楽ラノベの代表的作家である杉井光、様々なレーベルのローンチに名前を連ねている十文字青などの傭兵作家は入らないの?
 →どういう文脈で語るかは難しい部分もあるけど「ようこそ実力至上主義の教室へ」とかを入れないんですね。
 →一般文芸横断のベストセラー作家である有川浩作品とかは入れないんですかね?
 →ラノベっぽくない表紙・ジュブナイル感のある作品として「ミミズクと夜の王」とかへは言及しない感じ?
 →電撃ゲーム文庫、1作家1作品レギュで「鉄コミュニケイション」とかを選べなくても、「ガンパレード・マーチ」とか入れないのかな?
 →搭乗型巨大ロボット作品のフルメタ以降の断絶。「ナイツ&マジック」も三嶋与夢作品も無い。まあ、作品数が多い人気ジャンルでは無いしな……
 →シェアードワールドの代表作が蓬莱学園になってしまっている。1作家1作品レギュもあるのかもしれないけど、ソードワールドなどのフォーセリア作品、ポリフォニカなどの選出が無いのはいいのか……?
 →―――みたいなこと、みたいな言い出したら始まらないな!
 
■1作者1作品レギュレーション(?)について
 →「銀河英雄伝説」が入っているせいで「アルスラーン戦記」も「創竜伝」が入らない、「ロードス島戦記」が入ってリウイクリスタニアも入らない、「化物語」で「戯言シリーズ」が入らない。
 →「GOSICK」が入っているせいで「砂糖菓子~~~」が、「猫の地球儀」が入っているので「イリヤの空」が、「アウトブレイク・カンパニー」が入って棄てプリポリフォニカも、みたいな無理が出ている気がする。
 →「まおゆう」が入って「ログ・ホライズン」が入らない、「安達としまむら」が入って「みーまー」や「電波女」が入らない、みたいな。
 
■そもそもここ10年くらいの作品
 →他時期に比べても発行作品数が多い期間なのに選出作品が相対的に少ないし、ジャンルの走りでもヒット作でもない作品も目立つ。
 →選者があまり詳しくないか読めていない時期なのかな、と。なろう系・Web系が詳しい人がフォローするべき部分ですね。

 
まだまだ言えることはあるけどキリが無いのでここまで。
 
※ 予想はしてたけど、アレコレ言われたから翌日に続報書いたよ。