「第21回 好きラノ 2020年下期」投票

lightnovel.jp

投票対象作品で読んだのは210~220作品くらい。割と読みましたね。
今期は本当に面白い作品、好きな作品が多かったので投票作品選ぶの凄い困った。
ある程度縛りを加えないと絞り切れない感じだったので、とりあえず1レーベルから1作品縛りで選んでみた。
まあ、投票したいレベルで面白かった作品を出しているレーベルが20レーベル以上あったので最後まで悩ましかったんですけどね……
とりあえず新作を優遇しながら、続巻で化けた作品、続巻で「あれ、今まで投票してなかったけど僕この作品のことかなり好きなのでは?」と気づいた作品を優先した感じですね。
明日投票したら複数の作品が入れ替わるかもしれない。そんな様々な兼ね合いやタイミングで投票作品を選んだ感じです。
上でも言いましたけど、本当に今期は豊作でした。個人的にはね。
 
 
 
 

■声優ラジオのウラオモテ#03 夕陽とやすみは突き抜けたい? / 二月公 / 電撃文庫
【20下ラノベ投票/9784049134919】

伸び悩み声優が、突然舞い込んだ声優の仕事でベテランや売れっ子声優の中で自分の芝居と向き合う話。
「声優ラジオ」「声優本人」の小説だった1,2巻に対して、今回はキッチリとした「役者としての声優」を描いた作品になっていた。
「演じること」に対する剛速球ストレートの回答。
僕が「声優小説」「役者もの」に望むものがここにあった。最高でしたね。

 
 

■俺は星間国家の悪徳領主!(1) / 三嶋与夢 / オーバーラップ文庫
■俺は星間国家の悪徳領主!(2) / 三嶋与夢 / オーバーラップ文庫
【20下ラノベ投票/9784865546941】

善良さ故に前世で不遇な人生を送った男がスペースオペラ風ファンタジア―世界に転生して悪徳領主を目指す話。
ただ、「悪徳領主」を目指しているつもりでも周りから「慈悲深い名君」として祭り上げられる勘違いものであり、主人公を不幸にしようという「案内人」の悪意すら好意的に受け取る二重の意味での勘違い・思い込み系作品でしたね。
星間国家が存在するスペオペ風の世界観なのに、呪いなどが存在する世界で、闇鍋な面も含めて割と好きな世界観でした。
そして何よりもロボットが最高でしたね!ロボットイエー!ほとんどロボットで投票したようなもの!(失礼)
同作者の「乙女ゲー世界はモブに厳しい世界です」もそうでしたけど、なろう系でありがちな設定を集めて趣味のようなロボット物を展開するところ、趣味が全開で実に良いですね。
ロボット大好き。
醜悪でグロテスクな面もあるのに、全体的にそこまで重苦しくない感じ、いいバランス感覚しています。

 
 

■雪の名前はカレンシリーズ / 鏡征爾 / 講談社ラノベ文庫
【20下ラノベ投票/9784065218624】

違う世界からやってくる怪物と戦う兵器として改造された少女・少年の物語。
物語の概要としては前述した通りなんだけどこの作品の魅力はそういうストーリーラインではなく、残酷な世界の中で自分の気持ちと生き方に向き合った子供たちの姿にあるんだろう。
解像度が低い世界像はキミとボク的であり、どこかセカイ系のようでもある。グロテスクでどことなくエロティシズムを感じるけど、性よりも生を感じる、詩的で死的な世界観。
「散文的に、時には詩的に」というどこかの曲の歌詞じゃないけど、主人公が書き残した記録としてウェットに綴られた文章の連なりにため息をついてしまった。
生贄としか思えない境遇の子供たちが英雄として祭り上げられ、称賛され、憧れを集めているのは客観的に見ると酷薄な構図だと思うんだけど、その醜悪さを降り積もり雪のように覆い隠す。
頭で考えるじゃなくて、心で感じる。出来の良し悪しではなく、作品の好き嫌いで語るべき作品。
僕は、この作品が、好きでした。

 
 

■身代わり聖女は、皇帝陛下の求婚にうなづかない / 汐邑雛 / ビーズログ文庫
■身代わり聖女は、宰相閣下の懇願にうなづかない / 汐邑雛 / ビーズログ文庫
【20下ラノベ投票/9784047362543】

宗教国家の聖女(幽霊付き)が令嬢の身代わりとして招かれた国でのアレコレする話。
ラノベはキャラが好みに合えば楽しんで読める、を象徴する作品でしたね。
主人公のキャラがめっちゃ好きだったので楽しかった。
1、2巻で上下巻みたいな内容でしたが、割と納まるところに納まった終わり方なので、これ以上続きが欲しいかと言うと悩ましい。
並行している別シリーズみたいにページ数の割に話の展開が遅めで、これ以上続くとグダる可能性もあるので難しいところですね。

 
 

■大阪マダム、後宮妃になる! / 田井ノエル / 小学館文庫キャラブン!
【20下ラノベ投票/9784094068160】

大阪マダムが中華風異世界に転生して後宮妃になる話。
後宮のドロドロとした人間関係を洗い流す「大阪マダム」という属性よ……
ラブとかは無いけど、アイディアとキャラクターの勝利。楽しかったね。

 
 

■レッドスワンの混沌 赤羽高校サッカー部 / 綾崎隼 / メディアワークス文庫
■レッドスワンの死闘 赤羽高校サッカー部 / 綾崎隼 /  メディアワークス文庫
【20下ラノベ投票/9784049128147】

Twitterでの打ち切り告知から奇跡の復活による2年ぶりの新刊だったけど、近年のサッカートレンドを押さえていて素晴らしかったですね。
トランジションサッカーとゲーゲンプレスの系譜であるハイプレス、縦へのスピードなど。うん、面白かった。
サッカーが好きな人ほど楽しめる作品ですね。傑作サッカー小説。
死闘がサードシーズン出てくれないとスッキリしない終わり方しやがったので、ここでセールス不調で続き出ないということが無いように売れて欲しい……

 
 

■転生したら杉でした 目指せ樹高634m! 俺は歴史を眺めて育つ / 石化 / 単行本(宝島社)
【20下ラノベ投票/9784299007056】

転生したら杉になって何度も杉リスタートを繰り返しながら樹高634mを目指す話。そのまんまだな!
杉本人(?)の成長トライアンドエラー、杉の眷属個人個人のドラマ、長大な時間軸が流れることによる妙味など、色んなアプローチでの面白さがあって「妙な転生もの」として実に楽しかったですね。
レーベル名が無い宝島社の単行本なので、イマイチ認知度が低いのが勿体ない。続巻読みたいので売れて欲しい。

 
 

■転生前は男だったので逆ハーレムはお断りしております(2) / 森下りんご / アース・スターノベル
【20下ラノベ投票/9784803014754】

ファンタジー異世界の令嬢に転生した元男が異世界で知識チートしたり学校に通ったり色々とする話の2巻目。
相変わらずの主人公の女子としての恋愛偏差値の低さがTSものっぽくて実に良い。
男子校(?)の中でも自分らしく屹立する主人公の姿は読んでて気持ちよくて楽しい。
知識チートの源泉が「前世でちゃんと勉強した内容」という点が説得力に繋がっている気がしますね。
TS、転生、知識チートなど、それぞれの要素には特別新味がある訳でもないんだけど、王太子王太子婚約者との関係性や主人公の立ち居振る舞いによって実に上手く料理されてて高い満足感に繋がっている。

 
 

■地球さんはレベルアップしました! / 生咲日月 / TOブックス
【20下ラノベ投票/9784866990644】

地球さんがレベルアップしたことで、現代世界にダンジョンが現れて、世界のシステムがファンタジー化する話。
何よりも主人公の台詞である、
「修行せい!」
これは昨年の個人的なラノベヒットワードの一つ。
小動物系の外見でありながらもこのセリフがとてもよく似合う中二病主人公がとても可愛かったし、戦う意思が熱く、友情が暖かったですね。
作品の内容としては現代を舞台にしたダンジョンものなんだけど、ダンジョンによって変わる世界が箱庭的ながらも描かれているところが良かったです。
「修行せい!」によって変わった世界が楽しみですので、2巻も楽しみにしています。

 
 

現代社会で乙女ゲームの悪役令嬢をするのはちょっと大変(1) / 二日市とふろう / オーバーラップノベルス
【20下ラノベ投票/9784865547429】

乙女ゲームの皮をほとんど被っていない経済・金融アプローチによる日本再生物語。
名前は変名になっているけど、出てくる証券会社や銀行などのモデル会社が一目瞭然なので、ある意味で歴史if小説としての性格も持つ。
同作品が想定した時代と同時代を生きて、銀行や証券会社の破綻を目にしてバブル崩壊就職氷河期の煽りを受け続けた世代の人間としては、主人公の姿は英雄としか言いようがないものでしたよ。本当に。
乙女ゲームもの」「悪役令嬢もの」として読み始めるとまったく違うものを読まされる、という点が欠点と言える感じでしたね。
一昔前なら至道流星さんあたりがやりそうなアプローチでしたが、氏以外からこういう作品が生み出されるところなんか、なろうの土壌も侮れない。