死図眼のイタカ  / 著:杉井光 / 絵:椎野唯 / 一迅社文庫

死図眼のイタカ (一迅社文庫)

死図眼のイタカ (一迅社文庫)


一迅社文庫デビューラインナップ7作品その5。
デビューシリーズは打ち切りだったのに、「神様のメモ帳」「さよならピアノソナタ」と好評シリーズを連発し評判を上げ、2008年5月からは複数レーベル跨いでの毎月刊行を続けている、今ノリに乗っている俊英・杉井光の新作。

女系一族に婿として育てられた少年が、嫁を選ぶ儀式の前に連続猟奇殺人事件に巻き込まれ、謎の少女イタカと出会う話。
人の生き死にに容赦が無い現代伝奇小説。黒杉井が帰ってきた。
ちょっぴりミステリっぽさが入ってるものの、話としてはそう目新しいものじゃない。割とオーソドックスな伝奇。
ただ、サクサク人が死ぬハードな展開が続くこのクソ重い雰囲気が特徴と言えば特徴か。容赦ない点で好き好きは分かれそう。
重い話は嫌いじゃないものの、ヒロイン要素がイタカと四姉妹とで分散してしまい、ボーイ・ミーツ・ガールの要素が薄れてしまったのは勿体無いかな。
イタカをヒロインとして見るには影がちょっと薄い。イタカの設定が生かされてない。
それと、どうも主人公が好きになれず、そこがキツカッタ。
同じようなミス(姉妹の言うことを聞かなかったり)を繰り返して犠牲者を増やしてるところとか、「お前少しは考えたり。周りの話を聞いてから行動しろ」と言いたくなる。状況に振り回されてるだけに見えてしまい、この主人公は駄目だ……
そんな感じでシビアで凄惨な描写とかは好きなものの、キャラとかストーリーとか設定はどうにも好きに慣れんかった。
伝奇物として何か色々と足りなかった。出来は決して良くないなぁ。
次があるのか知らんけど、状況が整理された分次巻の方がおちついて読めそうだけど。まあ、出ないか……?


くそう、どうせ伝奇系小説出すなら「火目の巫女」を完結まで出してくれよ……