とくまでやる。 / イラスト:牛木義隆 / 徳間デュアル文庫

とくまでやる (徳間デュアル文庫)

とくまでやる (徳間デュアル文庫)


清涼院流水徳間デュアル文庫デビューシリーズ。
微妙なレーベル参戦が素敵だぜ。


毎日人が死んでゆく連続殺人事件に関係することになった主人公と親友、ガールフレンドの姉妹などの話。
日によって視点人物が変わり、2ページで1日がカウントされる構成になっているため、まさに「ページを捲る度に被害者(死者)が増えていく」という驚愕の小説。
勿論、前日の回想が1日(2ページ)の大半を占める日もあったけど、決定的な破綻をせずに「1日を見開き2ページで描く」というトンデモ構成で走りきったことは素直に賞賛したい。
淡々と死者がカウントされていく様はケタケタと笑えてきましたよ。
トンデモブラックユーモア殺人事件として、かなり笑える構成でした。本当に。
ただまあ、特殊すぎる構成の弊害は当然のように存在する。
1日2ページ構成のため、1日を表す文章量がほぼフラットになってしまうので、山場のパートでも文書量を増やすことが出来ず盛り上がりに欠ける
それに1日の密度が低いために、感情の揺れ動きや調査の流れもいまいちスカスカしたものになりがちである。
ただ、御大の作品の割にはヒロイン役のフレアとクレアが可愛かったし、この奇抜な構成だけでも評価に値するとは思います。あくまで意欲作・実験作としての評価ですが。
まあ、純粋な「物語」を読みたい人には向かない作品ですが、そもそも御大の大説が「普通に楽しめるような作品」になるはずが無い訳で、そういった方向に期待すること自体が間違いなんですがね。
とりあえず、既存の清涼院流水作品を楽しんで読めるような人なら、そこそこ楽しめる実験作にはなってると思います。良くも悪くも流水大説」の大枠から外れない作品でしたよ。