少女には向かない職業 / ミステリ・フロンティア

少女には向かない職業 (ミステリ・フロンティア)

少女には向かない職業 (ミステリ・フロンティア)

桜庭一樹による創元社でのデビュー作品。
「砂糖菓子の弾丸は撃ち抜けない」「暴君」に並ぶ地方都市三部作(仮名)の一つ。
第19回ミステリ・フロンティア配本作品。


中学生の少女二人による、人殺しの夏の物語。
桜庭さんお得意の、閉塞状態に置かれた思春期の少女を主役に据えた作品。
推定少女」「砂糖菓子の弾丸」などに通ずる作風であり、閉塞状態を打開できない子供故の無力さが焦点に置かれた青春小説。
P・D・ジェイムズの「女には向かない職業」を意識した「少女には向かない職業」というタイトルだが、精神的に未熟な子供では「殺人者」というレッテル(職業)に耐えられ無いという、中学生少女の脆さと危うさをよく表した、実に的を射たタイトルだと思いましたよ。
ミステリレーベルにありながら、ミステリ的な仕掛けやトリックが出てくる訳ではなく、ミステリというよりも鬱系青春小説と言った方がジャンル的には適切かな。中学生による分相応のレベルの殺人計画など、この辺のナチュラルなキャラ造形が魅力。
理不尽な境遇に置かれた少女が悩み苦しみ落ちていく様子や、少女が「間違ってしまったこと」に対して受動的な救いが無いシビアさが、青くて痛い
桜庭さんの「少女」ものは、萌えやご都合主義とは真逆の「現実の壁」を付き付けられる様な作品が多くて、面白いには面白いんだけど読後感が重いですわ。
うーん、それなりに面白いんだけど、そこまで好きにはなれない作品だったなぁ。


しかし、ミステリ・フロンティアからの発行ということで、もっとミステリに傾倒した作品を期待してた分、ちょっと肩透かしを食らった感は否めない。今度、この手の出版社から出す時はバリバリのミステリ小説希望