神様のメモ帳 / イラスト:岸田メル / 電撃文庫

神様のメモ帳 (電撃文庫)

神様のメモ帳 (電撃文庫)


火目の巫女」の作者さんによる新作。
うーむ、電撃の打ち切りラインの3巻直後の新作ってことは、「火目の巫女」は打ち切りなのかね……?
結構好きなシリーズだったのでマジ凹み_| ̄|○


クラスメイトを通して「ニート探偵」を初めとする変なニートと知り合うことになった少年が巻き込まれる事件の話。
痛い、痛い、痛い。
前作に引き続き、ビターな現実を突きつけられる痛さはこの作者の持ち味か。
更に社会的に「駄目」なニートに関する記述が胸に突き刺さるようで痛い
「痛い奴らだなー」と嘲笑うような意味ではなく、ニート連中の心情や主張に深く共感を受ける自分が切ない*1
ストーリーは、ニート候補生の少年の青春劇をサスペンス風ミステリとしてまとめあげてあって割と好み。
叩かれて、突き落とされながらも、前に進んでいき真実が明かされていく流れはカタルシスがあって実に良かった
うーん、前作といい今作といい、杉井さんの作品は私の肌に合うらしい。
ミステリやサスペンスが生存し辛い電撃なだけに、売れるかどうか心配になる作品ではありますがシリーズ化希望(出来れば「火目の巫女」の続巻も……)シリーズ化が無かったとしても、この作者さんには長らく創作活動を続けて欲しいものです。


ところで、アリスのキャラクターからヴィクトリカ@GOSICKを連想してしまうのは私だけではあるまい?







 

*1:

だってさぁ。これって自分が一度通った道(心理)なんだもの。「よっ、俺」とか言いたくなったもの。

私はヤル気の無い就職活動の末結果的に就職出来てしまったけど、もし仮に就職失敗してたらこんな感じになっていただろう姿に思えて仕方ないんですよ。

自分の社会的に駄目な面を突きつけられているようで痛い。それでいながらドラマティックな青春劇を演じてるこの登場人物のニートどもが妬ましいよ。チクショウめ。

「物語」のような出来事に出会うことの出来る生活なんて恵まれた青春をしてやがる。「仲間」と「青春」をするなんて、恵まれたモラトリアムだと思いますよ。

私には中途半端に悲観的な未来が見えてしまうくらいの賢しさがあるから、現実はもっと優しくないと思ってるから、こんな前向きなニートなんてなれなかったさ。

この作品の奴らみたいな、ある方面に関してのエキスパートな技術を持ってるなら話は違ったかもしれないけど、自分の技術や能力は客観的に見て大したことが無いから体制にしがみ付かないとやっていけない無力な自分がいる。

そんな突き抜けた技術を持ってるならもうちょっと、自由に生きれたんじゃないかと思考する。

あーもう、共感と嫉妬と諦観と悔恨を呼び起こされる。

感情を揺さぶり、自分の中に何かを残すような作品(文章)が傑作とか言うのなら、私にとってこの作品は主観的には傑作と判断するべきだろう。

穏やかじゃない生の感情をぶつけたくなるこの作品の登場人物たちに乾杯。