半分の月がのぼる空 8 / イラスト:山本ケイジ / 電撃文庫


アニメ化され、06年10月からはドラマ化される人気シリーズの短編集第2弾。
6巻で長編が終わり、今巻で短編・長編を含めたシリーズ最終巻


文化祭で馬鹿やったり、爺さんが食い物に立ち向かったり、多田コレクションが引き金の闘争が行われたりする話。
複数の話が詰め込まれた短編集で、一番最初の文化祭の話だけは7巻の文化祭短編の続きになってる。
文化祭の話は普通に楽しかった。
写真オークションで白熱する男達や、プロレスでモヤモヤを吹き飛ばしたりするのが馬鹿で楽しかったし、演劇を通して青春を燃やしてる演劇部の姿は素直にまぶしかった。里香の才能を垣間見ることが出来る点も良かった。
1〜7巻までの様々な出来事の積み重ねの末にこの光景があると思うと、胸にジーンとくる。
後は、司とみゆきはよろしくやりやがれコンチクショウが。お幸せに。
一方で、未来に希望が持てない・何も手にしてない頃の裕一の無気力感は共感できるものだったので、ちょっぴりしんみりしてしまったよ。
あーもう、将来を考えるとか生きるって大変だなぁ、と。
他の短編も粒揃いでそれなりに楽しめましたよ。
ただ、夏目や亜希子さんの「今後」がちゅうぶらんになってしまったのは残念だったかな。夏目が海外に行くかどうかくらいは、はっきりと描かれると思っていただけに残念だ。
それと、エピローグ辺りで、最後にもう一度里香と裕一の幸せなシーンを見たかったかな。シリーズの締めとして。
以上のように十分に面白かったけど少し不満は残った。そこそこ好きなシリーズだったからこその不満ですが。



総評としては、強烈に好きという訳ではなかったけど、飽きることなく最後まで読める好シリーズでした。
少年と少女の不器用で真っ直ぐな青春小説として評価できるだけに、「ツンデレ」等の馬鹿の一つ覚えのような「記号」でカテゴリ化するべき作品ではないと思いますね。「ツンデレ少女が出てくる」ということで良く名前が出る作品ではありますが、そういった偏った見方はして欲しくはない。
まあ、過剰にマンセーするつもりもありませんがね。
とりあえず、最後に「いつか来る終わりまで精一杯お幸せに」という言葉を少年少女に贈りたい(何を気取ってやがるんだろう自分)